紅葉の玉川上水を行く

紅葉の玉川上水を行く

玉川上水緑道は今まさに紅葉の見ごろを迎えています。イチョウなどの黄葉はまだこれからという感じでしたが、モミジなどは鮮やかに色づいています。今回は最寄りの玉川上水駅(請願院橋)から羽村取水堰までサイクリングしてきました。行きはよいよい帰りは恐い・・・。まさにその通りで、帰りはそのまま引き返すのではなく多摩川の土手を走る事にしました。朝8:30に出発し、帰宅が13時頃。足はパンパン、空腹も限界という事でラーメン屋さんで昼食をとった事を考えれば正味往復で4時間弱という所でしょうか。

その甲斐あって玉川上水沿いの見事な紅葉を楽しむことができました。疲れましたけど・・・翌日筋肉痛になりましたけど・・・。

小平監視所を境に変わる眺め

玉川上水は羽村の堰より取水していますが、その原水は約500mほど下流にある第3水門で大部分が埋設鉄管によって村山・山口貯水池に送水されます。村山貯水池は多摩湖、山口貯水池は狭山湖とも呼ばれ、地元ではそちらの方が馴染みが深いでしょうか。それぞれ豊かな水をたたえ、こちらもモミジが今ちょうど見ごろを迎えているのですが、恐らく多くの人はまさか玉川上水の水が流れ込んでいるのだとは知らないでしょうね。私も以前コラム記事「玉川上水」を書くまでは知りませんでした。第1門で多摩川の水を引き込み、しばらくはたっぷりの水が流れていますが、第3門を超えると一気に水量が減ります。

私が常日頃見慣れている玉川上水の姿と言ったらよいでしょうか。川底がはっきりとわかる程度の水深こそがそれらしい玉川上水ってなもんですよね。ただ、一点確実に違うのは、玉川上水の最上流部の水はとても澄んでいるという事です。今回は雨の影響なのか、増水していたために清流と呼べるほど澄んだ水の流れをご覧いただけないのですが、前述したコラム記事「玉川上水」をご覧いただければ上流と下流の違いがおわかりいただけるでしょう。

さて、多摩川からの原水の大部分が第3門で送水された後、残りの原水はさらに小平監視所で東村山浄水場へ送水されます。ここでは一部を送水するとかいうのではなくそっくりそのまま送水してしまうのです。え?それじゃこの先は空になっちゃうの?と疑問に思うかもしれませんが、そうではありません。実際玉川上水は小平監視所の下流でもちゃんと流れています。ただし、中身が入れ替わってしまっているのです。ではどこから引っ張ってきた水なのかというと、昭島市にある東京都流域下水道「多摩川上流処理場」からの再生水という事になります。

実際ここ小平監視所を境に、水質はもちろん川から漂う匂いも少し変わります。多摩川からの原水は何と言っても飲み水になるものです。それなりの水質が必要ってなもんです。それに比べ再生水は再生水。それなりの水質はあるのでしょうが、原水に比べたら落ちるでしょうね。

変わるのは中身だけではありません。玉川上水自体の姿も変化します。小平監視所以東の玉川上水は堀が深く、木の根がむき出しになっていて今にも岸壁が崩れ落ちそうな印象すら抱いてしまう箇所もあるのです。飲み水確保のための上水道としてしっかりと整備され守られていた上流部とそうではなくなり手を付けらずそのままの姿で今に残る下流部とと・・・そんな事情があったんでしょうね。ちょうど今玉川上水整備作業が行われ、法面(のりめん)の崩壊を防ぎ橋梁・緑道からの眺望を確保、そして名勝「小金井サクラ」の並木の保存するための整備が進められています。10か年計画という事で、まだまだ先の事となるのですが、新たな姿をいずれ見せてくれる事でしょう。詳しくは弊社ブログ記事「史跡玉川上水の整備」をご参照ください。

秋の玉川上水緑道を行く

今回のサイクリングは玉川上水駅の南口にかかる「請願院橋」よりスタート致しました。ここからしばらくは玉川上水に沿って整備された「玉川上水緑道」を行きます。整備された遊歩道は西武拝島線の終点「拝島駅」を超えると間もなく途絶えます。「五丁橋」を超えるとそこからは少し大変です。玉川上水に沿った道がないという事は時折玉川上水を離れてしまったり、見失ってしまうという事でもあります。見知らぬ道を迂回しながら玉川上水が流れているであろう方向だけ見失わずに進んでいくわけです。そうしてしばらく車道を行きつ戻りつするうちに再び玉川上水に沿って伸びる道にぶつかり、やがて遊歩道が整備されていきます。

拝島上水橋から上流に向かって写した画像

拝島上水橋から上流に向かって写したもの

拝島上水橋は昭和の森ゴルフコースを抜けたあたりです。この橋のすぐ北側には「湯楽の里」という温泉施設があって、私も年に何回かはここで湯につかり仕事の疲れを癒します。橋のすぐ目の前にモミジがあるので、玉川上水緑道を歩く人々も立ち止まり写真を写す姿が見られます。

緑道沿いを進むだけですからわけなく来れます。途中玉川上水に沿ってかなりの高木がそびえ立っていたりするわけです。木立の下で見上げれば秋晴れの空に向かって伸びる枝葉がそれはもう美しいですよ!何かしらのパワーがもらえちゃいます。

拝島駅まではあと橋三つ分です。直後にあるのは「ふたみ橋」。この橋は車は通行できません。玉川上水には時々このような歩行者や自転車だけが渡る事の出来る橋がかかります。株式会社いずみホームの事務所付近だと「西中島橋」がそれに当たります。緑道を行く人たちだけが利用できるので、静かな佇まいが魅力です。車道の橋を渡る時はしっかり左右を確認して渡らないと危険です。横断歩道のないものも随分とあるので、飛び出してはいけません。自転車だとついスピードに乗ってノンブレーキで走り過ぎたくなるのですが、この点はくれぐれもご注意くださいね。

平和橋の下、鴨の一団を撮影

拝島駅直前にかかる「平和橋」。鴨さんの一行が遠ざかっていきます。最初は橋のすぐ下にいたのですが、私が近づきカメラを構えているうちに遠ざかってしまいました。

拝島駅を過ぎるとしばらくは「みずくらいど公園」内を進みます。みずくらいどという名称は一風変わっていますね。これは漢字にすると「水喰戸」と書くようです。この付近の土地は、古くから「みずくらいど」と呼びならわされてきたほど、水を吸うという事のようです。江戸の飲み水として開削された玉川上水は何度となく失敗を重ねながら工事が進められました。この一帯を掘ってみるとせっかく引き込んだ水がどんどん地面に吸われ、進路を別にとらなければならなくなったのでしょうね。当時の苦労を物語る失敗の証が「玉川上水開削工事跡」としてこの公園内に残っているのです。開削工事の跡は、「みずくらいど公園」の北にある玉川上水五丁溝付近より立川段丘崖線に沿って南へ延び、武蔵野橋公園付近で東へ方向を変え、西武鉄道拝島駅前の玉川上水平和橋の付近まで、約一キロメートルにわたって残存していたと伝えられます。しかし、現在は、みずくらいど公園内及び付近に開削工事の跡が残るのみです。この玉川上水開削工事跡は、近世前期の大規模な土木工事の遺構として、歴史的、学術的に大変貴重なのです。

みずくらうど公園内は武蔵野の雑木林そのものです。木立の中を進む気持ちよさと、歴史的な遺構から漂う歴史の重みを感じながら進みます。そして公園を抜けるとしばらくは玉川上水とつかず離れずという具合に進む事となります。

車道で玉川上水を行く

みずくらいど公園を抜けた直後にある「五丁橋」から11個目の「加美上水橋」までは玉川上水に沿う道がないため、車道を行きつ戻りつしながら進んでいくことになります。路地を進んで行き止まりだったり、大型車が通る幹線道路を走るので、焦りは禁物です。ここまでのような感覚だと思わぬ事故に巻き込まれてしまうかもしれませんので、交通ルールを守り、安全第一で進みましょう。

ただ、この区間もそれなりに楽しめます。この辺りからかなり雰囲気が変わってくるからです。良い意味での田舎っぽさと申しましょうか、いかにも小旅行を楽しんでるなぁという気持ちになってきます。

この区間を進むと幾つかの橋は知らぬ間に通り過ぎてしまいます。玉川上水沿いの道がないのですから右に左に迂回していると、玉川上水を探すこと自体が目的になるからです。「あっ玉川上水あった!」と近づいて橋の上から写真を撮る。帰ってから地図を見ながら振り返ると、間の橋が幾つか抜けていた・・・という具合です。

清巌院橋から上流を見た景色

清巌院橋から上流を写したもの。西側は「清岩院」の敷地です。境内の数カ所から湧水が出ており「東京の名湧水」に選ばれています。すぐ南に中福生公園があり、ここでも大きな木の黄葉が楽しめました。

「嘉泉」で知られる田村酒造さんがあるのはここから橋二つ分先です。「宿橋」という小さな橋を渡ると大きな敷地に趣のある門構えが見えてきます。「嘉泉(かせん)」は敷地内に酒造りに最適な水を得た喜びに由来するとの事。

この辺りには玉川上水から引いた「田村分水」がある事でも知られます。代々福生村の名主であった田村家が分水開設の願い出を出して開削されたそうです。田村酒造の敷地内を流れ、個人宅や畑の間を抜けていくように流れていき、やがて多摩川中央公園の水路に放流され、しばらく公園内の水路として流れた後多摩川に合流します。

今回のサイクリングでは羽村の堰からの帰路は多摩川の土手に整備された遊歩道を通りました。途中多摩川中央公園内を通り抜けるのですが、確かに田村分水から繋がる水路がありました。多摩川の流域にある公園はとても広く、たくさんの人達が水の流れを横目に散歩やサイクリングを楽しんでいました。

当ブログ記事の冒頭の写真が実は「宿橋」から上流に向かって写したものです。色鮮やかなモミジは田村酒造さんの敷地のもだったのでした。さて、この先の加美上水橋から先では再び玉川上水に沿って進むことになります。

桜の名所羽村取水堰へ

加美上水橋から終点の羽村取水堰まではあとわずかです。この橋の南側には福生加美上水公園があり、この公園内を通り抜けると多摩川に出ます。ここまで来ると多摩川と玉川上水の距離はものすごく近くなります。当たり前っちゃ当たり前なんですけどね。何せこの少し先から分岐して玉川上水が流れ出しているのですから。二つの川の間を伸びる道を進むとやがて砂利道となります。ここが約200本あると言われる「羽村の堰の桜」です。桜の名所として知られていますよね。

加美上水橋から上流を写したもの

加美上水橋から上流を眺めるとこんな感じです。日差しを受けたモミジの鮮やかさ、水面に写るモミジが何とも言えませんよね。上流部の玉川上水はかくも美しいのです。

ここから新堀橋くらいまでがアスファルト舗装された道だったように思います。そこから先が砂利道となり、いよいよ桜並木が現れるのです。桜の葉も紅葉し綺麗でしたが、もう大分散ってしまっていました。桜の咲く時期また来たいですね。

堂橋から下流方向を見た様子

堂橋から下流を写したものです。向かって右側に桜が立ち並びます。

第2水門から下流を写した画像

ようやく羽村取水堰に辿り着きました。第2水門より下流を眺めた風景です。水量たっぷり、大迫力ですね。前述したようにこの少し先にある第三紅葉に染まる玉川上水はいかがでしたか?羽村の堰は駐車場がありませんので、来るとしたら電車を利用して最寄の羽村駅から徒歩、あるいは少し離れた熊川駅とか福生駅あたりからウォーキングがてらアクセスするのがいいでしょう。今回の私みたいに自転車で行くもありですよね!普段私達が見慣れているのとは違う玉川上水の顔を見る事ができますよ!!

2017年11月19日