狭山丘陵のカタクリ群生地

野山北公園カタクリ群生地にて撮影

野山北公園カタクリの群生地

映画「トトロ」の舞台となった狭山丘陵にはカタクリの群生地があります。一つは武蔵村山市野山北公園、もう一つは野山北公園の割と近く、都立野山北・六道山公園インフォメーションセンターの近くにあります。こちらは少しわかりにくい場所なのでまずはインフォメーションセンターに立ち寄って情報を集めてからにしましょう!何度か行っている私も、今回道を間違えて2~30分余計に歩いてしまいました。武蔵村山野山北公園は都立野山北・六道山公園内にあり、その一部になっているのですが、厳密には違うのですよね~。まぁ、だからどうだっていう話かもしれませんが、一応念のため。

カタクリは多年草

カタクリはユリ科カタクリ属に属する多年草です。花を咲かせるまでに実に7~8年もかかるのです。桃や栗より大変です。柿にわずかに勝っているくらいなもんで、実を結ぶまでにはそれはもうけなげに耐える時間が必要なのです。何故そんなに時間がかかるのかと言うと、芽が出て花を咲かせ、そして実をつけるとその後まもなく葉を落とし、地上から姿を消してしまいます。いわゆる球根花というやつで、地中の中で人知れず過ごす時間の方が圧倒的に長い。一年のタイムスケジュールとして、地上で生命活動を確認できるのは春先からたったの2か月程度。それ以外の10か月は休眠状態だったり、次のシーズンに備えて根を伸ばしたりしているわけなのです。

それと言うのも生息地に関係があります。カタクリは半日陰の木漏れ日がさす程度の環境を好みます。始終日差しが降り注ぐ日当たり良好な場所では生息しません。山や岡の北斜面でよく見られるのもそのせいでしょう。そのため、春のちょうど良い日差しのころにせっせと光合成をして球根に養分を蓄え、日差しが強くなりすぎるころにはさっさと葉を落とし、省エネモードで次のシーズンに備えます。発芽した個体が7年も8年もかけて花をつけるのもそうした生態のせいです。ちょっとずつ大人になっていくのです。一年やそこらで急成長しません。ゆっくり大人になり、そして長生きします。なんと40~50年も生きるのですよ!ほんとご長寿さんです。

発芽一年目

発芽一年目のカタクリ

ご覧ください。ひょろっと一本伸びているのが発芽一年目のカタクリです。

この後登場する花をつけたものと比べればその余りの違いにビックリします。他の植物ならここから二葉になったり、枝分かれしてどんどん成長していきます。でもカタクリはこの姿のまま養分を蓄えて、やがて葉を落とすのです。今年はほぼこれで終了しちゃうんですよ。本当にゆっくりゆっくりと大人の階段を上っていく奥手な子なのです。

二年目以降~花をつけるまで

数年後のカタクリの葉

二年目になると私たちが知るカタクリの葉の姿となります。ただし、ものすご~くちっちゃいです。ちっちゃいまま約二か月間と言う地上での活動を続け、その年のノルマは終了。恐らく前年よりもたくさんの養分を蓄えて三年目を迎えます。すると、翌年でっかくなっとる!わけなのです。恐らくそれでもまだまだちっさいのですが、去年の努力がちゃんと実ってる、一回り大きくなっとるのです。そうして、三年、四年と年を重ねいよいよその時を迎えます。花を咲かせるまでの期間は翌年一周り大きくなる分の養分を蓄えたら、さっさと地上部分を切り離して地中部分だけで過ごします。日当たりの良い好立地だとあらゆる植物が侵入を試みます。そこで繰り広げられる生存競争は大変なものです。そうした苛烈な競争を避け、半日陰のさほど人気のない場所で生息する事を選び、そこにうまく適応したのがこうしたカタクリの生態なのでしょう。

もう間もなく・・のカタクリの葉

5~6年くらい経つとかなり立派になります。もう花をつけても良さそうですが、決定的な違いがあるのです。

二枚目の葉が出たら咲きます!

7~8年で順調に成長しても一枚だけではまだ花を咲かせません。あともう一枚、あともう一枚必要なんですね~。二枚目の葉が出たら・・・大人の仲間入り!いよいよ花を咲かせます。

二枚揃うとようやく花が咲きます。

カタクリと虫

カタクリはその生殖活動において虫の力を借ります。これは他の多くの植物でもそうなのですが、カタクリなりの虫との共存の仕方ががなんともいじらしいのです。まずは受粉です。カタクリは写真の通り下を向いて花弁を反らすようにして咲きます。受粉の手助けをするのは主に「マルハナバチ」という小さなまん丸い昆虫です。小さい体に似合わない割と大きな羽音をたてて、花から花を飛び回り、気に入った花があるとぐい~っと頭を突っ込む姿がなんとも愛らしい。この蜂にアピールするためなのでしょうか、普通に観察すると見る事ができない花の内側に模様があります。

花の中心部分、オシベなどを囲うように花のような模様がありますね。他の花とはいかにも異なる形をしているせいで「ひょっとしたら花だってわかってもらえなかったらどうしよう?」とでも考えたのでしょうか。

「ワシは花じゃ~~」と猛烈にアピールしているようにも思えませんか?そう考えると、健気ですね。

無事受粉が済んだら次は実です。ここでの工夫は実ではなく種にあります。この種にはアリが好む成分が付着していてその匂いに誘われたアリが離れた場所にある巣へと持ち帰ります。恐らく種に付着した成分をペロペロ舐めたら、種自体は食べないのでしょう。その後巣から運び出された種がその周辺で新たな命を育みます。

乱獲によって減ってしまったとされるカタクリ

一年のうち地上での生活はわずか約2か月。少しずつ少しずつ大きくなり、7年も8年もかけてやっと花を咲かせるこのカタクリですが、かつては乱獲されその個体数を大きく減らしてしまったそうです。そうしてとられてしまったカタクリは40歳だったのでしょうか、50歳だったのでしょうか。こう考えると盗掘は罪なことですね。犯罪うんぬんというより、健気に地道に生存を続けてきたその長年の歴史を摘み取ってしまうという事が心無い行為に思えてしまうという意味です。40歳なら日の当たる地上での生活はわずか80か月で、暗い地中での生活が400か月。年計算だと地上6年6カ月強、うち地中で33年3カ月です。50歳だと地上10カ月(8年3カ月)、地中500か月(41年6カ月)ですよ。なんかこうやりきれなくなってきませんか?一度失われてしまうと回復までに最低でも7~8年、本当の意味で元通りになるには40年くらいの年月はかかってしまうのですね。

カタクリと片栗粉

かつてはこのカタクリの球根から片栗粉をとっていました。上述したように乱獲され個体数が減ってしまった原因の最たるものと考えられます。現在ではジャガイモやサツマイモのデンプンから作られるようになりましたが、現在でも「カタクリの片栗粉」は高級品として売られているそうです。

武蔵村山市野山北公園のカタクリ群生地

早朝のカタクリ

武蔵村山市野山北公園の西側、釣り池などの奥にある田んぼのある辺りの北斜面にカタクリが群生しています。狭山丘陵の西部に位置するこの公園ではカタクリが終わるとすぐに桜が開花します。カタクリと同時に楽しめるのは市民プール付近に咲いている「フジザクラ」くらいでしょう。続いて花壇のチューリップが彩り豊かに咲き並び春の花シーズンが終わります。その後は新緑の季節を経て、夏が終わるとモミジが綺麗です。

さて、上の写真は早朝に写したものです。カタクリは日が暮れると花弁を閉じます。そして、日差しが差す頃にまた花弁を開きます。時間があれば、徐々に開いていく様子を動画などで撮影してみたいものです。

冒頭にある写真が日中開花した状態のカタクリ群生地です。公園内の様子については「武蔵村山市野山北公園」をご参照ください。

カタクリ沢

カタクリ沢フェンス内

野山北・六道山公園内では他にも幾つかのカタクリ群生地があるようです。その一つが「カタクリ沢」です。赤坂駐車場に車を停めてインフォメーションセンターから歩いて10分もかからない程度の所にあります。かつてはかなり盗掘され、個体数が激減していたそうですが、20年ほど前にフェンスで囲い保護したため、今ではかなり回復したとの事でした。「武蔵村山自然に学ぶ会」の皆さんがフェンスの中にいらっしゃり、カタクリの生態について色々教えてくれました。実は私もこの会に入会させていただこうかと考えております。

2018年03月26日