矢川緑地と矢川を往く

矢川緑地北側入り口周辺の画像

矢川緑地は立川市の南東部、羽衣町から国立市青柳にかけて広がる約2.1ヘクタールの緑地です。多摩川の河岸段丘である「立川段丘」から湧き出す水によって育まれる水生生物とそれを囲む樹林地の緑が美しい場所です。ここから湧き出した水を水源とするのが「矢川」。南武線「矢川」駅の由来となっているのです。鳥のさえずりや水辺の植物を楽しみながら穏やかなひと時を過ごすしてみてはいかがでしょうか。

矢川緑地の概要

「東京における自然の保護と回復に関する条例」に基づき、昭和52年3月31日に保全地域に指定されました。高度成長期にこの一帯を団地化する計画が持ち上がった際、「みのわ地区」の主婦が立上って、保全されるに至ったという経緯があります。

立川段丘からの湧水を水源とし、立川市の東南部から国立市の西南部を流下して、青柳段丘崖先で谷保用水に合流する延長約1.3キロメートルの矢川を中心とし、隣接して上流部南には湿地帯、下流部北に樹林地が広がっています。その周辺には湧水が随所に見られ、また矢川にはナガエミクリ、ミクリ、ミゾホオズキなどの貴重な水生植物、湿地帯では木道を歩きながら湿地性の草本類を見ることができます。ただ、今回筆者が訪れた際には木道を歩くと水中を盛んに動く水生動物が多数確認され、何かな?と思って目を凝らしてみると恐らくアメリカザリガニであろう個体がたくさん確認されました。外来種と言う事だけで目の敵にするわけではないのですが、食欲旺盛かつ生命力のある生き物なので、生態系が壊滅的な状況になっているのかもしれないという懸念がありました。

樹林地は、シラカシ、ケヤキ、コナラ等を中心に構成される林となっています。河岸段丘における崖の事を「崖線」と呼びますが、この崖線に沿ったエリアには今なお武蔵野の雑木林が散見され、多摩エリアの散策を楽しいものとしてくれます。こうした貴重な雑木林が後世に残していくためにも、自治体や地域ボランティアによる保全活動が重要な役割を果たすのです。崖線付近では多くは開発によって道路に舗装されてしまい、崖やその周辺に自生する雑木林は姿を消してしまっていますが、矢川緑地一帯ではそうした貴重な自然が残されているのです。立川市はこうした崖線によって幾つかの段差構造をしており、注意して観察するとその地形上の特徴を認める事ができます。弊社コラム「立川市の地形」に詳しく説明しておりますので時間があればご覧ください。

矢川緑地内の風景

矢川緑地内の矢川上流部の様子

矢川の上流。緑地の西側から湧水が集まって川となしています。

東京都の名湧水57選の一つ選ばれた矢川の流れ

透き通った水の流れ。水草がたなびきのんびりとした気分になります。東京都の名湧水57選の一つ選ばれた清らかな流れは本当に貴重です。

湿地の植物の様子

湿地帯の植物。

矢川緑地内の大きな柳の木

緑地西端部にある柳の大木。ときわ通りからの石段を下りるとすぐにあります。

鴨が泳ぐ池の風景

「サンクチュアリ」エリアの鴨が集まる池。静かに近づけば逃げません。とは言え、あんまり近づくとさすがに逃げ出しますので、近づきすぎるのはやめましょうね^^

矢川緑地へのアクセス

JR南武線「西国立」駅より徒歩約9分(約680m)

JR南武線西国立駅からのアクセス

西国立駅からだととりあえず南に進み「みのわ通り北」の信号を目指します。駅から右回りでも左回りでも良いのでこの信号を見つけてください。ここからみのわ通りを南下します。できれば東側の歩道を通行して下さい。すぐに「羽衣町三丁目」の信号が見え、そのまま南に進むとセブンイレブンが見えてきます。ここまでくれば狭山緑地はもう目と鼻の先。みのわ通りはそのすぐ先で下り始めます。東がを眺めればもう狭山緑地が見えるはずです。時期によっては鬱蒼としていてわかりずらいかもしれませんが、明らかに段差があって、その低いところに湿地帯が広がっています。みのわ通り沿いの入り口から階段を下りて入るもよし、少し手前の葬祭場のところの路地を左折して北側の入り口から入るもよし。

JR南武線「矢川」駅より徒歩約10分(約776m)

南武線矢川駅からのアクセスマップ

矢川駅からはほぼ南武線に沿って行けます。駅北口から線路沿いの道を北西方向に進みます。この線路沿いの道は行き止まりになるのでT字路を左折(南方向)、踏切を渡ります。踏切の先で二またに分かれますが、どちらに進んでも緑地内に入れます。南に進むとすぐに矢川が見えてきます。小さな橋の手前に入口があります。東に進んだ場合しばらく道なりに進みます。住宅地を抜けたところに光西寺というお寺があり、その前に北側の入り口があります。

矢川弁財天

矢川弁財天の参道

みのわ通りの下り坂のところから東を眺めると矢川緑地が、西側を眺めるとこの「矢川財弁天」があります。狛犬ならぬ「狛蛇」が祀られている点が珍しいですね。「財宝の神様」というだけでなく、言葉(弁)の才、無尽の知恵、さらに延命などを授けてくれると言われています。

矢川

矢川緑地内を流れる矢川の画像

矢川は、立川段丘崖を水源地とし、立川市の東南部から国立市の西南部を流下して、青柳段丘崖先で谷保用水に合流する延長約1.3キロメートルの小河川です。矢川緑地内を通り下流で谷保用水(谷保分水)に合流します。

矢川の名称については「矢川」と「谷川」という二つの説があるそうです。一つは「流れが速いので、放たれた矢のような川である」という事から「矢川」。もう一つはかつての谷保村誌「溝梁」、「橋」の解説によると、「谷川」や「谷川橋」と記されていた事によります。

みのわ通りから写した矢川

みのわ通りから写した矢川です。崖の上に住宅が立ち並び、そうした住宅の敷地から水が流れ出している所も見られます。崖に沿う形でわずか約1.3キロメートルほどの小川が街中を流下していくのです。崖から湧き出す水を求めて太古の人々が住み始めて幾年月。今なお残る住宅はそうした人々の子孫なのか。思わずそんな歴史に想いを馳せなたくなるような風景です。

矢川緑地内から伸びる矢川

この写真奥が矢川緑地。矢川駅から来られる方はここから入れます。緑地を抜け市内を巡る矢川を見ていきましょう。

水量たっぷり増水後の矢川

たっぷりと水をたたえた矢川。台風後の増水のせいでしょうか。普段はもう少し水量が少ないです。

ホタルの住む川コイ放流禁止の看板

ホタルは清流に生息します。何故コイを放してはいけないのかと言うと、ホタルの幼虫のエサを食い尽くしてしまうからです。カワニナという巻貝がいます。ホタルの幼虫はこのカワニナを食べて成長していくのです。しかし、鯉は大食漢でこのカワニナをぼりぼりと食べつくしてしまうのです。

今話題の「水を抜いてみた」という番組をご覧になった事があるでしょうか。池の管理者などから依頼を受けて池の水を抜いてみる。すると、そこから珍しいお宝や、巨大な外来種などが出てくるという企画番組です。この番組を見た事のある方ならご存知かもしれませんが、コイは外来種です。錦鯉など日本の文化にも深いかかわりを持つため意外に思う人もいらっしゃるかもしれませんね。コイが生息する場所は水質が悪化してしまうそうです。さらに、生態系が崩れ、日本の固有種が駆逐されてしまいます。こう書くとコイが悪者みたいに聞こえてしまうかもしれませんが、そういう事ではありません。水の中を泳ぐコイの姿も捨てた物じゃありません。しかし、個体数の減り続ける日本の固有種を未来に残すためには、やはり棲み分けみたいなのが必要なのかなぁと。

ホタルの飛ぶ夕べ。かつてそこかしこで見られた風景が今なかなか見られなくなってきたからこそ、私達が意図して保全していかないと未来に残す事ができません。失われつつあるものは保全できますが、完全に失われてしまったら取り戻す事はできないですからね。

矢川に沿って伸びる小道

矢川に沿ってしばらく道が続きます。インターロッキングで舗装された情緒のあるコースを散策したりサイクリングしたりできます。

矢川いこいの広場

川の流れを眺めつつ自転車をこぐと、やがて公園が見えます。ここは矢川いこいの広場。川を挟んで目の前には国立第六小学校があります。広場内には大きな木が何本か、そしてトイレもあります。

親水性のある公園風景

石畳の階段があって、清らかな流れに触れる事ができます。矢川は六小をLの字に巻いて流れていきます。

国立第六小学校南側の矢川と湿地の画像

国立第六小学校の南側にある矢川と湿地。自然豊かな環境で児童たちものびのび育っていく事でしょう。

矢川沿いの道

住宅地を抜ける矢川。

甲州街道直前

矢川に小さな橋を渡し、住居を構える風景がそこかしこに見られます。この先が甲州街道です!

五智如来

矢川が甲州街道に交差するところにある御堂。「五智如来」と言うのだそう。説明板によると(引用)

「矢川と甲州街道が交差する付近は「はしば」と呼ばれ、大正の初めごろまで「矢川橋」が架かっていました。橋のたもとには五智如来の祠(ほこら)ががあり、江戸時代に八王子から移住した人々が、それまで信仰していた五智如来を祀ったのが始まりと伝えられています。 五智如来は、仏教で言う五種類の智(大円鏡智、妙観察智、平等性智、成所作智、法界体性智)を備えた仏の事で、大日如来の別名とも言われています。 昭和三十年代まで、夕方になると五智如来前に燈明や線香、供花が絶えませんでした。現在でも毎年十月十二日には、地元の人達が集まり、念仏をあげ、五智如来を供養する「おこもり」が行われています。」

という事だそうです。この地を開拓した人達の想いが今なお受け継がれているのですね。

入り組んだ路地と矢川

甲州街道を越えると、矢川に沿って進むことができなくなります。川沿いに道はなく、周辺を迂回しながら矢川を追う事にします。

民家の脇を流れる矢川

小道から写した矢川。もう間もなく谷保用水に合流するようです。

国道20号線

バイパスに出てママ下橋方面に向かいます。

ママ下橋からの眺め

「ママ下橋」からの風景です。東京にもこんな田園風景があるのですよ。青柳崖線から湧き出す水が育む農の風景。崖の事を「ハケ」とか「ママ」と地元の方言では言い表します。この写真の上部に写るビニールハウスの手前で矢川が谷保用水に合流します。

谷保用水の写真

谷保用水は谷保分水とも言います。府中用水の支流で農繁期のみ多摩川から取水し、農閑期になると取水口が閉じられるそうです。

矢川と清水川

二本の小川が流れています。左側(西)が清水川で右側(東)が矢川となります。この二つの小川が谷保用水に合流します。

矢川おんだしの写真

「矢川おんだし」と呼ばれる場所。矢川と清水川がぶつかって谷保用水に流れ込んでいる様子がわかります。矢川にしろ清水川にしろ崖からの湧水ですから澄んでいます。谷保用水の方は多摩川からの引水の為少し濁っています。画像の中央から少し下の部分ではっきりと境い目がわかるのが面白いですね。さて、ここで少し清水川を遡ってみます。

上のママ下

上のママ下と呼ばれる湧水源。かつてはこうした豊かな湧水を利用してわさびが作られていたそうです。さきほど矢川おんだしで谷保用水に合流した「清水川」の水源の一つです。

青柳崖線の階段

階段を上ると崖(ママ)の上に出ます。崖の上にしばらく小道が続き、西に歩いていくと多摩川の見える見晴らしの良い場所へと至ります。

国道20号線道路下の様子

国道20号線の道路下を流れる清水川。ここでも数か所水が湧き出していました。この一帯はママ下湧水公園となります。こうして青柳崖線の湧水が集まって清水川となり、立川崖線からの湧き水が集まってできた矢川と共に谷保用水に合流するわけです。

あきすい門の写真

谷保用水を少し先にあるあきすい門であきすい堀と二手に分かれます。

あきすい堀画像

南に流れるあきすい堀。中央道をくぐりぬけ府中用水本流へと合流します。

水量の減った谷保用水

ほとんどの水があきすい掘りへと流れてしまい一気に水量が減りました。なんでも農閑期には全てあきすい掘へと流れていくそうですので、その時期は空堀となってしまうようです。さて、矢川緑地から矢川を辿り谷保用水、あきすい堀と見てきました。いずれまた府中用水系統の散策もしてみようと思いますが、今回はここまでです。